2002/03/20 Wed 暖 快晴 「たぶん」
「ムネオハウス」という言葉を聞いて音楽のジャンル名を連想した人は少なくないと思いますが、さすがにそんなつまらないダジャレを恥じることなく人前で口にできる人はなかなかいないわけです。ただ、まぁ掲示板では書いてしまった人がいると。で、例によってワッショイという経過。2chの中とはいえ、これだけのムーブメントになったというのはすごいですね。でもまぁNet上の様々な事件を目撃してこられた方々にしてみれば「おもしろいけど、予想通り」ではないでしょうか。曲を作る人、自サイトにアップロードする人、素材を提供する人、ジャケットを作る人、Webを作る人、と見ず知らずコラボレーションが行われていく様子はFlashムービーや各種オフ会、イベントなどでも見られたはずです。
2chのスレッドがパート2に入るころにはあちこちのサイトでとりあげられるようになり、私も楽曲その他関連ファイルの収集を熱心に始めました。片っ端から右クリック→保存、右クリック→保存、右クリック→保存、手元にはすでに40曲以上のMP3ファイルが並んでいます。そして再生しながらディスプレイの前で腹をかかえて大笑いし、ファイル名に「ムネオハウス#**」などと番号をつけて次々とWinMXの共有フォルダに放り込んでいく。ムチャクチャ楽しいのですが、それでもいつものことといえばいつものことです。
で、昨日からモーリーロバートソン氏のサイトで、ムネオハウスウォッチャーの方々へのインタビューが放送されていてこれも即共有フォルダ行きですが、いやそれはともかく、このインタビューがものすごくいい。ウォッチャーのmona氏…… (モーリー氏──サンプリング元ネタの著作権や、ジャケットの鈴木氏の肖像権に触れないか。) 「冗談をどこまで許してくれるのだろうというところ」「著作権は確かに言われてしまえばそうかなと。ただ肖像権とかについては、スポーツ新聞があれだけ宗男氏の顔をネタとして載せているのに、個人の冗談はダメなのかと。マスコミなら好き放題でいいのか。それこそ『オマエモナー』という話」「ムネオハウスが名誉毀損だというなら、小林よしのりが著名人をボコボコに描くこともできなくなってしまうし、パロディ文化を消滅させること」「あくまで一例ですけど、辻本さんが国会の中で『ド忘れ禁止法』とか『疑惑の百貨店』とか、あれも名誉毀損というかひどい話だと思うんですけど。(ムネオハウスの中には辻本氏に対する皮肉もあるが、それに対して辻本氏がキレたとしても)じゃあ辻本さんはいままで何を言ってきたんですか、ということになる」
「いまどきメディアの内容を信じる人がいるのか。オリンピック中継のとき、2chで民放は見たくないという意見が多かった。横でわけのわからないタレントがわけのわからない話をしてて、こっちは集中して見たいのに気分を害される。ゴールゴールゴールゴール! のサッカー中継も同じ。テレビの側では絶叫中継で喜んでるのかもしれないけど、視聴者は拒否反応を示している。スポンサーにクレーム入れようという書き込みもあった」 (モーリー氏──ムネオハウス以外のことでも、裁判とかになると権力もマスコミも味方はしてくれないだろうが、ファイル共有とかP2Pでは続いているということですか?) 「結局のところ昔から、極端な規制が出てきて独裁しても、どこかでそれが崩れていってという繰り返しなんで。もと貸しレコード屋さんでいまはダンスミュージック作ってるところがコピーガードCD出しましたけど、評判は悪いし。(裁判等で勝つ勢力があっても、ユーザーはみな)横でせせら笑ってるだけじゃないですかね」
4月に予定されているイベントのオーガナイザーumai_bow氏……「いまさら、鈴木議員をバカにするのはやめなさい、と言ってくることはないんじゃないかと。もしそういうことあればハイやめますとしか言いようがないですけど。あくまでこれは遊びでやってるんであって、誰かに迷惑をかけるんなら、イベントはやめてもいいと思ってるし。ただ曲は残りますから、そういった意味でのムーブメントはいつまでも続くのではないかと」 (モーリー氏──ムネオハウスのようなものが、風刺としてマスコミを超えたメディアではないかと気にする人がいると思う。) 「世間はそっちのほうに話を持っていくと思います。でもその方向は曲を作っている当人たちにとってはいささかマト外れになってしまうと思う。みんな純粋に鈴木宗男議員という人のキャラクターを楽しんでいるだけのこと。どれだけ鈴木議員のおもしろい声がサンプリングできるかという」
まとめが下手クソですいません。まぁ興味のある方は実際に聞いていただければと思うのですが、とにかく、極端に理屈っぽく考えることなく自然体にNetの特性を話している、あくまでムネオハウスをパロディとして、当事者でありながらニュートラルな捉え方をされている方々だなと思いました。すごい。しかし、たしかにこういったインタビューでスラスラと話をされるのはすごいのですが、じゃあ彼らの考え方がすごいものかというと、実はそうでもないのでは。
つまり、このインタビューで出てきた内容って、Net利用者のうちかなりの部分の人はすでに経験でわかっているのだろうな、ということです。ただこれまで、あまりうまく言葉にすることができなかっただけで。だからここで登場したmona氏とumai_bow氏には「よく言ってくれた」と心から拍手を送りたく思う一方で、彼らのものの考え方を「Net世代の新たな価値観」などといまさら大げさにもてはやすことはしたくないなとも思いました。ようするに、MP3ファイルをダウンロードしながら私が感じた「いつものことといえばいつものこと」の内容がまさに、このインタビューの中で語られていたということですな。
それにしても、これまで言葉にならなかった思考が、形のない音楽であるムネオハウスによって明らかになるというのは本当に楽しい体験です。こういう瞬間に立ち会ってしまうとますますNet接続はやめられない。ネタ物テクノもやめられない。インタビューをされたモーリー氏に感謝。ムネオハウスを作った素敵なお前らたちに感謝。そしてまさにいま目の前で、私のディスクからアップロードされる「ムネオハウス#**」が、緑色の転送グラフを伸ばしていく……