業務日誌

2002/12/13 Fri 晴 寒 「お彼岸」

会場前を走るなんだか今夜幕張メッセが降りてくるということらしいので行ってみることにします。ただ、仕事が終わって幕張へ向かってみるものの、このぶんだと到着予定時刻は23:40になってしまいそうです。神の降臨時刻は23:00なので40分も遅れてしまいます。しかしまぁライブに遅れはつきもののようで、掲示板をチェックしたところ、開始を30分繰り下げると判明し、多少はホッとします。

なんとか海浜幕張駅に到着し、列車を降りて猛ダッシュ。メッセ前の掲示板に「クリスマスプレゼントコミケin幕張2002」などと出ていたので場所を間違えたかと思いましたが、これは単なる予告のようです。いやそんなことはどうでもよくてメッセに飛び込み通路を走っていくと、"Interpol...and Deutsche Bank...FBI...and Scotland Yard..." オー、オー、神の声が聞こえてきます……。既にステージが始まっているとわかり、降臨の瞬間に立ち会えなかったことは確かに残念なのですが、それよりも、本当に今日コンサートが行われていると確認できた安堵のほうが大きかったかもしれません。神は気まぐれですから、当日になって「やっぱキャンセルで」なんてことになってもおかしくはないですからな。

入り口でこんな袋などをもらい、ようやくステージにたどり着いたものの、黒山の人だかりを分け入っても分け入っても人また人、会場中央くらいまでしか進めませんでした。それでもここまで来ればなんとか神の姿を確認できます。クラフトワークのコンサートというと、機材がつまった大きなコンソールがステージ上にズラリと並んでいるものでしたが、この秋のヨーロッパ公演からはバイオノートGRのみというIT革命ぶりです。それにしてもほんとにただ4人がノートPCを前に突っ立っているだけ(いやほんとはいろいろ操作しているのでしょうが)という、だったら家でCD聴いてりゃいいだろという勢いのライブです。もちろん、突っ立っているだけでカッコ良すぎるのですが。

そんなふうにしてステージを眺めていると早くも名曲「電卓」が来た! ボクハ オンガクカ デンタク カタテニ、うわー前のほうの客たぶん大声で歌ってるんだろうなうらやましい! しかし私の周囲、中ほどの客も歌いはしないものの踊る踊る。私の2列くらい前では中年の夫婦が踊る踊る。後から聞いた話だと最前列ではスーツ姿のサラリーマンが踊る踊る。もちろん若い人も踊る踊る。かと思えば隣のやつは直立不動で、電卓の効果音にあわせて人差し指だけを伸ばした手を頭上へ突き上げる。ギャハハハハ、開始20分ほどでもう何でもありな状態、どんな楽しみ方もここでは許容される、そう神の前では皆平等なのであります。

その後も「THE ROBOTS」「TOUR DE FRANCE」といった超POPナンバーで大盛り上がり。そして次に聞こえてきたのは「ガスッ、ブルルル」というエンジン音、スクリーンにはこのマーク、1974年の名曲「AUTOBAHN」の始まりです。最初こそ客もヒートアップして拍手やフォーという叫び声が聞こえましたが、ゆったりとしかし大波のごとく押し寄せる電子音の快感にみんなノックアウト、ほとんどの人がただ口を半開きにして聞き入るのみでした。曲が終わると割れんばかりの拍手と歓声。私の右後ろにいた10代とおぼしき男女ふたり連れなど、最初は彼氏が「うおー、アウトバーンだ、これCDだと20分以上もあるんだ」などと彼女に向かって悠長に説明していたのですが、終わるころにはその彼女が「すごいー! すごいー! すごいー!」を連発。……いや、そりゃすごいと思うのは私も同じですが、始まる前に「へー、そうなのー」とかいう感じだった人がここまで感激するとは。

まーしかしほんと、生で神の姿が見られるなんて、彼らの音を初めて認知した中坊のころは夢にも思いませんでしたな。というかもう解散同然だと思っておりましたよ。それがいまここでこうして……オオオ、もう言葉になりません。そして老若男女を問わず人を受け入れ人を狂わせる、この電子音の懐の深さと圧力の強さ。最後の曲「BOING BOOM TSCHAK/MUSIC NON STOP」が始まるころには、涙とよだれが流れた跡が白くなった顔面の筋肉はゆるみっぱなしで、神が去っていく様子もよく覚えていないのでした。

クラフトワークのステージのあとは、ほんともったいない話なのですが、会場で合流した連れと座ってダラダラ話して、そのまま寝てしまいました。週末に仕事なければSQUAREPUSHERのライブアクトにも参戦していたのでしょうが、体力温存が優先でした。

幕間は死屍累々 天井を眺めつつ死亡

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