地域文化論(中国文化)


 中国でもコンピュータ利用者は爆発的に増加している。例えば、ネット利用について調べてみると、中国の英字新聞『チャイナ・デイリー』紙によれば、1997年度には67万人だった中国のインターネットユーザーは、1998年度には210万人に達したという。

 また、中国国内でインターネットに接続されているコンピューターは約74万4000台もあり、本格的なネット利用が進行していることが分かる。

 子供の遊びにもコンピューターゲームが浸透している。任天堂のファミコンはもちろん、ソニーのプレイステーションのような新しいゲーム機もちゃんと存在する。

 コンピュータ利用の増加に伴い、どのようなことが問題になっているのだろうか。まず、本格利用が始まったといっても、まだまだネット環境の悪さは圧倒的である。接続料金は高いし、回線品質も悪いのでデータの転送速度は遅い。

 しかしそれ以上に利用者が不満として挙げるのは、中国語で提供される情報量の少なさである。同『チャイナ・デイリー』紙によれば、中国国内のウェブサイトは約5300ということである。サイトをどのように数えるかにもよるが、少なく数えても日本には何十万もの日本語サイトがあることを考えると、その少なさは歴然としている。中国政府は、中国関連のサイトを増やすための研究開発費として200億円以上を投じているという。

 また、違法ソフトの氾濫も大問題となっている。特に前述のゲームソフトの海賊版は深刻である。通称「10in1」「100in1」などという、1枚にゲームが10本も100本も入っているCD-ROMが堂々と売られている。それも、怪しい露店のようなところではなく、ちゃんとしたデパートでである。

 また、日本のソフトをそのまま違法コピーしたものも多いらしく、パッケージやCD-ROMには中国語が印刷されているのだが、ゲーム中の画面表示や登場人物の音声は全て日本語のままというものも見られる。

 もちろん、コピーされたCD-ROMが使えないようにするための回路がゲーム機には組み込んであるのだが、ゲームショップへゲーム機を持ち込めば、その回路を無効化してくれる改造を4000円ほどでしてくれる。

 数年前に音楽CDの海賊版が国際的な問題になったが、コンピュータソフトの著作権についての議論は不足しているようだ。

 以上のような問題点は必ずしも中国特有のものではない。コンピュータの普及には避けて通れない問題ばかりである。この点で、中国はこれまでの諸外国のコンピュータ利用推進の経緯を研究し、参考にしていくことが可能であり、考え方によっては、有利な立場ともいえよう。

 中国特有の問題として、政府自体が、民衆が外国の情報にアクセスすることをあまり好ましく考えていないということである。ただ、これについては、たとえ法的にいろいろな規制をしたところで、政府の意図に反して結局は意味のないものになってしまうだろう。

 インターネットをはじめとする種々の技術は、誰がどの情報にアクセスしたかを特定することは極めて困難であるし、国境など無効化してしまう。実際に、以前起こった天安門事件のニュースは、新聞・テレビ・ラジオなどでは報じられていなかったにもかかわらず、アメリカからの電子メールによって知っていた中国人もいるという。

 西側の国々から流れてくるテレビの電波が東ヨーロッパに革命をもたらしたように、コンピュータの普及が中国の情報政策を転換させるかもしれない。


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