セドリック特別仕様車乗車リポート

特別付録「国庫金納付書」「交通反則告知書」付き
1999年6月1日午後4時15分東名高速道路上り線愛知県宝飯群音羽町。名古屋へ遊びに行った帰り道であった。乗り始めて1ヶ月のCBR250RRはすこぶる好調で、私は120〜125km/hで追い越し車線を快走。先ほどから前方には若い姉ちゃんが運転するコルサがうろちょろしていた。ぶっ飛ばしては前の車に追いつき減速、前が空くとまたぶっ飛ばしといった具合である。私はだいたい120km/hで走っていたため、コルサの姉ちゃんに追いついてしまう。

姉ちゃんがまたぶっ飛ばす。前が空くので、それにつられて私はやや加速、速度計は125km/hくらいを指す。そのとき、ミラーに反射した赤い光が私の目に入る。「おっ、気付いていなかったがPC(パトカー)がいるじゃん」ちょっと考え事をしていたので、うしろにパトカーがいることには気付かなかったのである(覆面ではない)。コルサの姉ちゃんを捕まえるのだと私は思い、左車線によけてパトカーに道を譲る。

しばらく何の気なしに私は走り続ける。ところが、パトカーはコルサを追走することなく、運転席に座る警察官は私のほうを見て路肩を指さす。風切り音でほとんど周りの音は聞こえないが、耳を澄ますとかすかに「オートバイ」という言葉が聞こえた。

ここで初めて事の重大性を理解した。瞬時に私の頭の中では120-80=40km/hという演算処理が行われる。リッジレーサーのナレーションの声で「Yeah! You've got 3points!」と幻聴が聞こえる。減速し、パトカーの後に続いて近くのバスストップレーンへ。

「はーい、パトカーの前にバイク停めて下さいねー。」「バイクは80キロまでしか出せないんで。まあ、そうでなくてもちょっと速かったかな。」パトカーの運転手にそう言われ、続いて「免許証持ってますか。それじゃあ後ろの座席の左側へ乗って下さい。」すごい!テレビの「交通警察24時」と全く同じだ!なんかカッチョイイぞ!

違反3点という重みが頭にのしかかる。しかしそれと同時に、なぜか異常なまでの冷静さが蘇ってくる。そうだ、PCの車種のチェックだ!後ろに回ってみると、セドリックであった。普通のパトカーだね。さて、指示どおりに後部座席左側に乗り込む。車内は書類やカバンで散らかっていて、後部座席右側は人が乗れる状態ではない。パトカーというよりは営業車のような印象である。パトカーのスピードメーターを見る。普通と同じ180km/hスケールだった。少し幻滅。どうせ捕まるんなら高速機動隊仕様のスカイラインか何かに乗りたかったものだが、そんなのに捕まるほどの速度だったら取り消しですな。

警察官は開口一番「自分では何キロくらい出してたと思う?」うわ、これもほんとに聞くんだ。ベタベタ。「120キロくらいだと思いますが……」私がそう答えると警察官は左手を中央コンソールのやや下部に持っていく。そこには液晶表示板があり、何も表示されていない。警察官がボタンを押すと、そこに「114」と数字が表示される。計測値は114km/hであった。紛れもなく3点である。罰金はいくらになるのか見当もつかない。「あなたが気付いて少し減速したときに測ったけど、これでも34キロオーバーだから、違反3点、罰金25000円だね、でもまぁ」この『でもまぁ』を聞いて期待は大きく膨らむ。測定誤差等を考慮に入れるので、たいていは額面どおりの速度超過をとられることはない。「これだと罰金もものすごいし、点数もバカにならないし、まぁ周りの車も同じくらいのスピード出してたから」やった!問題はどこまで大目に見てくれるかである。

「あの時前の車と詰め過ぎてたから、車間距離不保持だけとって、速度超過はなしにしておいてあげるわ。1点、罰金6000円ね。」

3点25000円が今回に限り1点6000円の大御奉仕!ちょっと奥さん、これはお買い得!ふてくされずに素直に反省の色を見せたのも効果があったかもしれない(※注)。ここでバカみたいにたてつくと交通警察24時のネタになってしまう。

※注:おそらく、どの違反をとるかは内規に従っているだけなので、どれだけその場で反省の色を見せたところで点数が軽くなるようなことはない。はず。

「車間詰めすぎるとねえ、前はどんな人か分からんからねぇ、もしタチの悪い奴だとブレーキ踏まれたりするかもしれないよ。自分を守るためにも車間を空けて、あまり速度は出さないようにして下さいね。」ごもっとも、ごもっともです先生。大先生。

そして「6000円」と書かれたスペシャル仕様の振込用紙国庫金納付書(画像30キロバイト)がプレゼントされる。「はい、この用紙でね、日本全国どこの郵便局でも銀行でもいいから、6000円払って下さい。それだけでもう手続きは終わりです。」すごい振込用紙だ。ちなみにこのお金は国庫に納めることとなる。交通安全対策特別交付金勘定とか書いてある。罰金って、交通安全対策金なのか。納付期限は1週間である。それを超えると静岡県警から用紙が来るらしい。その場合は用紙の郵送料等を負担しなければならないので割高になるとのこと。

保護者の名前と実家の連絡先を聞かれる。この情報が何に使われるか気になるので尋ねてみる。ちなみに、親に連絡されたりすることがないのはテレビで見て知っている。「ああ、連絡するようなことはありませんよ。ただ、少年の場合は保護者を書く欄があるからね。もし連絡するとしたら、再三の督促があるにも関わらず払わない場合とか。」なるほど、私はまだ少年なのか。8月が20歳の誕生日だからギリギリである。それにしても、警察官はてっきり私が親に連絡されることを心配しているのだと思っている。テレビで知ってますから、そんなこと最初から心配してませんよ。

学校や学年を聞かれたりもする。また、免許証住所と現住所が異なるので、現住所を書かされる。助手席に座る警察官の持つあのバインダーにはさまれた用紙にである。マニア的には、あのバインダーを手に持って何か書き込みができるというのもなかなか感慨深いものであった。時々助手席グローブボックスの無線機から何かが聞こえることもあったが、明瞭に聞こえないものが多かった。ただひとつ確認できたのは「歩行者から落下物の通報」という一言であった。歩行者ということは一般道か。それにしても、落下物をわざわざご丁寧に警察に通報する人もいるものである。

最後に「交通反則告知書交通反則告知書(画像61キロバイト)」に署名と拇印をして終了。理不尽な取締ではなく明らかな違反なので、逆らうわけもない(前のコルサが捕まらないのにはやや不服だが)。ただ、指紋を採られるのは気分が良くないので、これからは認めを持ち歩くようにしよう。「そこにタオルあるから、もしよかったら指のインクふいていいよ」サービスはなかなか行き届いている。

「これからどこまで行くの」「浜松です」「愛知と違って静岡県警はスピード違反の取締しかやってないから、今回でも捕まったら即免だったよ。十分気を付けるように。」どうやら静岡県警より愛知県警のほうが話が分かると主張したいらしい。本当のところはどうなのか怪しいものだが。後から調べたところ、二輪車は罰金25000円ではなく20000円だったし。

ものの15分でセドリック特別仕様車試乗会は終了。正直なところ、うわー、ついに反則やっちまった、という気持ちではなく、やったー、安くすんだー!という気持ちが圧倒的。落ち込むどころか明るい気持ちで再出発。今回捕まった原因は、

  1. 120km/hくらいで捕まるとは全く考えていなかった。二輪車の常識を知らなかった。
  2. ちょっと考え事をしながらの運転だったので、ミラーのチェックが甘かった。
  3. また、ミラーを見たとしても、このバイクのミラーは小さいし私は目が悪いので早くから発見できたかは疑問。
  4. っていうか前のコルサ、てめーが捕まれ。
などが考えられますが、やはり1が一番大きいでしょう。パトカーが来ても平気で100km/h以上で走っていたのですから。これまで100km/hくらいで走っているバイクを見て、何でみんなこんなに真面目なんだろうと思っていましたが、どうやらバイクの120km/hは四輪車の150km/hくらいに相当するみたいです。もう何年かで法が改正され二輪車でも100km/hが合法になるようですがね。

それにしても全く、バイクというのはメリットの少ない乗り物ですな。基本的にひとりしか乗れないし、乗れば乗るだけしっかり疲れるし、荷物は積めないし、寒いし雨だと悲惨だし、連れと出かけても会話ができないし、おまけに速度制限も厳しいとは。いやはやまったくこんなどうしようもない乗り物、面白すぎてたまりません。


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